ちはるのイタリア留学 その2

 《先生探し》それも自分にぴったりくる先生を探すのは、イタリアであれ日本であれ、そう簡単にはいかないものです。特に声楽の場合、実際目に見えない部分を”感じ”として『頭の上に響きをのせるように』だの『あくびをする感じで』だの表現するわけです。例え同じことを表現するにしても、その人によってその感じ方も違ってくるだろうし、その先生の”感じ”の表現が自分のその感じ方とぴったりくるまでには、ある程度の時間も要するのです。

 歌い手として有名だときっと良い先生なのではと考えがちですが、私はむしろその逆で、歌い手として有名でない方が、良心的で良い先生である可能性が高いように思うのです。というのは、第一線で活躍する才能と、教える才能とは別だと考えるからです。それでは有名でない歌い手が全て良い先生かというと、もちろんなかなかそうもいかないものです。


クレモナの歌劇場 Amilcare Ponchielli
 カルロ・ベルゴンティのレッスンを1ヶ月ほど聴講したことがあるのですが、彼のレッスンは発声がある程度しっかりできていないと、数回歌わせて「はい、次」とベルト・コンベア式に簡単に終わってしまうのです。つまり、彼ぐらいのレヴェルになると、音楽的な指導のみのレッスンであって、発声指導などはしないのです。彼らからレッスンを受けるには、レッスンを受ける側のレヴェルも問題になってくる、という訳ですね。

 さて、イタリアには主に発声専門に教える先生というのがいます。発声からしっかり学びたい人は、そういう先生につくのが一番だと思います。そして又、たいていどの町の歌劇場にも1人や2人、権威あるオペラ専門のピアノ伴奏者という人がいるものです。音楽的な事などは、彼らから学ぶのも方法かと思います。


 ところで、イタリアに知人のない場合、どのように先生にめぐり会うのかですが、とりあえず、どこか適当な音楽講習会に聴講なり、受講なり参加してみることをお勧めします。そこには当然ながら志を同じくする人達が集まってくるからです。そこで何らかの情報が得られることもあるでしょうし、てっとり早いのは、その受講者の中から”これは”と思う人を見つけ、だめでもともと、声をかけてみるのです。特にイタリア人は人なつっこいし、親切にその先生を紹介してくれることと思います。

 私も実はこの手で先生を紹介してもらうことに成功し、その先生がとても気に入ったのでそのまま、現在に至るという訳です。又、もし実際にレッスンを受けてみて気に入らなければ、他に行っても一向に差し支えないのです。日本のように○○門下だから、そこから出て行くのはちょっと...などという雰囲気はイタリアにはないからです。
 また、レッスン代に関しても、日本では1レッスン1万円なんて今や当然ですが、イタリアでは1レッスン1万円なんて、よっぽどでない限りないと思います。高くても4000円ぐらいでしょうか。ちなみに私は約8000円で40分レッスンを4回受けています。

 1年間ぐらいの短期留学であれば、スカラ座のあるミラノがやはり魅力的でしょう。2〜3年とゆっくり時間がとれるのなら、あちこち回って自分の気に入った町に落ち着くのも良いかと思います。イタリアにはたいていどの町にも歌劇場の1つぐらいあるので、歌の先生もあちこちにいるはずです。




著者 渡辺 智春