イタリアに住みついて早や数年が経つのですが、時々、不便だなあ、と思うことがあります。

その1 24時間営業のコンビニが無いこと!

 東京で学生やっていたときには、演奏会の帰りなど、ちょっとお腹がすけば何か買っていこう、と気軽に立ち寄り、週刊誌などを立ち読みして...などとよくやっていたのですが、イタリアではお店は、普通夕方8時にはシャッターが閉まってしまうので、遅い時間はお腹が空いたら、自分で何か作るよりほか無いのです。

 デパートなんていうのもないなあ。(編集部注 渡辺さんはピサにお住まいです)
日曜日にゆっくり家族でお買いものというのも、ここでは不可能でしょう。
そうそう。お昼休みというのもあるのです。お昼の1時から4時までは、どのお店もシャッターを降ろしてしまいます。そんな訳で、どんなに忙しくても買い物だけはまず先にやっておかないと、特に土曜日などは、買い損ねると日曜日に冷蔵庫の中が空っぽ、という悲惨な目に遭うことになるので、要注意なのです。
 イタリアは慢性的に仕事不足で失業者が多いのですが、私などは、24時間営業のコンビニなどは、それを幾分解消できるのではないかと、思ってしまいます...

その2 居酒屋さんが無いこと。

 ちょっと落ち込んだりしたときなど、景気付けにちょっと一杯ってそんなに悪い事じゃないと思うのですが、(実は私は大好きなのです)イタリアには居酒屋さん的存在が見あたらないのです。

いや、あるにはあるのですが、日本のあの活気があって「へい! いらっしゃ〜い!」と何もかも吹き飛ばしてしまうような明るい雰囲気とは違うのです。
 あの焼き鳥や焼きおにぎりの味は、日本の文化だ!と思うのですが、ちょっとおおげさかなあ。
私の見たイタリアの夜は、恐いぐらい静まり返って、女の子の一人歩きなんてとんでもないのです。場所によっては男の人の一人歩きも危ないとか。日本なんて、夜遅く(例えば10時頃)女の子一人で地下鉄に乗っても大丈夫ですよね? 主人にその話をしたら、「東京なんて、そんな大きな街でそんなはずはない」って信じてくれないのですけど。


ところで、イタリアの有名な音楽家の御子息さん達は、何をしていると思いますか? 一般的には、やはり音楽家をやっていそうな気がしますよね。ところが、どうやらそうでもないようです。

「オペラにはうんざり。オペラ歌手はまるで停止していて、まるでバッカラのよう。ミュージカルの方が好き。」

というキァーラ・ムーティーさん(24)は、有名な指揮者、リッカルド・ムーティーの娘さんなのですが、現在、女優さんとして活躍しています。つい最近では「Onorevoli detenuti」(--名誉ある囚人--)という映画にも出演したそうです。

注:バッカラとは’乾燥した塩漬けのタラ’のことですが、お店のガラスケースの中で、よく口を開けたまま売られているのです。
 

 
そして、あのパバロッティの娘さん、クリスティーナさん(33)は舞台監督として、バルセロナでデビューしたそうです。(といってもオペラではなく風刺劇で)パバロッティは彼女をジャーナリストにしたかったらしいのですが、彼女自身は、

「最終的には作家になりたい。」
のだそうです。

 とはいえ、芸術という広い分野でみたら、どちらもその畑の中で生きているって事になりますね。

さて、7月は一応国際コンクールと名の付くものを2つほど、挑戦してみました。といってもマリア・カラス・コンクールのような大きなものではないのですが。

 結果は2つともダメでした。私は才能ないのかなあ、もうだめかなあ。歌などもうやめて第2の人生でも探そうか、平凡な主婦をしようか、と落ち込んでいました。でも、私にとって歌はタバコか麻薬の一種のようで、歌っていないとダメなのです。精神的に落ちつかなくて...

 そんな訳で、結局やめるにやめられず、今ではすっかり立ち直り、この次の機会を目指して近所迷惑も顧みず、再び毎日歌っております。

 ところで、今までにも幾つかのコンクールの類を受けているのですが、それらのコンクールでいつも驚くのは、韓国の人達のレベルの高さです。あるコンクールでは、イタリア人僅か、半数以上が韓国人。入賞者も半分以上を韓国人が占めているなんて、ここイタリアでは、そう珍しい話では無くなってしまいました。

 同じ東洋人なのに何が違うのかな、と考えているのですが、今、韓国の音楽教育のシステムがすごいらしい、という話を聞いたこともあるのですが、実際のところは、わかりません。
彼らはイタリアでコンクールに入賞して帰国すると大歓迎され、オペラ歌手として仕事がいくらでも待っている、という事らしいのです。

 その点、日本と随分事情が違うなあ、とうらやましく思います。イタリアの小さなコンクールに入賞したくらいでは、日本でオペラ歌手として食べていくのは難しいですよね。...
ある夏期講習会で、ローマに住むという、とても素敵な声を持っている日本人の方にお会いして、

「日本には帰らないのですか?」とお聞きしたところ、「日本に帰っても、歌で食べてゆけないし...」
とおっしゃっていました。

 海外でせっかく苦労して勉強して帰っても、日本ではなかなか音楽で食べて行くのが難しいのが実状です。
 クラッシック音楽などは、西洋の文化で日本のものでは無いのだから仕方ない、といわれれば仕方ないのかも知れませんが...

しかしお隣、韓国の人達のパワーを見ていると、日本はこのままではと心配に思うのは、私だけでしょうか。



著者 渡辺 智春