第1回(97年1月31日までの情報ソースから)

 このページでは、ドイツ・オーストリアの音楽シーンについての情報を提供していく予定です。
具体的な内容としては、

1.ホットな話題(指揮者の移動、話題作の初演、音楽家逝去、邦人の活躍、音楽祭情報など)

2.各都市のオペラ座の演目

3.講習会、コンクール情報

4.その他、楽譜・書籍等の刊行案内

などを予定しています。内容は最新のもの、信頼性の高いものを選びますが、実際に演奏会を訪れる方は必ず事前に、ツーリスト・インフォメーションや、主催者事務局、歌劇場に変更がないかどうかお尋ねください。

 今年はいったいどのような年なのでしょう? 音楽家、愛好家にはとても大きなプレゼントが用意されています。

・シューベルト   生誕200年 1797.1.31-1828
・メンデルスゾーン 没後150年 1809-1847
・ブラームス    没後100年 1833-1897

そうそうたる顔ぶれではありませんか。でも皆さんは、100年とか200年とかといった時間をどのように実感されますか? 歴史の知識から? 他の人物との比較から? 200年といわれても実感わきませんよね。生誕、没後にかこつけてその作曲家のコンサートを組むのは音楽家のよく使う手ですが、聞く方にとっても、その作曲家の曲に親しむ良い「きっかけ」になるのではないでしょうか。

 ところで、このクラシック・コミュニティー・サービスの他のページに、私はハンブルクについてのお話を書かせてもらっています。ブラームスの生誕の地である、この北ドイツの街に興味のある方はぜひそちらもご覧ください。クラシック音楽に詳しい方は、ここでちょっと待て!とおっしゃるかもしれません。そうです、なんとメンデルスゾーンもハンブルクの出身なのです。もっとも物心がつくまえに一家でベルリンへ移住してしまったのですが。ちなみに、彼の姉の、優れたピアニスト・作曲家であったファニー・ヘンゼルもフェリックス・バルトルディと同年の1847年に没しています。

イタリア音楽との比較のために一言つけ加えますと、ドニゼッティは1797年シューベルトと同年に生まれ、1848年に没しました。つまり、やはり生誕200年、そして来年は没後150年。案外「きっかけ」には事欠かないようですね。  私はじつはこの原稿をシューベルトの誕生日1月31日に書いているのです。それで今回は、トピックとしてこの作曲家についての記事を取り上げたいと思います。

 ドイツでは、ベルリン、西ドイツ、中部ドイツ、バイエルン、そして北ドイツの各ラジオ放送局が、今年一年毎日25分ずつ!シューベルトの作品を紹介し、365日で彼の音楽を全て!放送するという壮大なプロジェクトをやっています。そのためにあの700曲を越える膨大な歌曲に関しても、録音のない曲は演奏家に委託し、CDを作り、その全てをカバーするという徹底ぶりです。本屋ではその放送予定が一冊の本になって売られているのです。

指揮者のニコラウス・ハーノンクール氏(アーノンクールと言った方が日本では一般的か。オーストリア人、元ウィーン交響楽団主席チェロ奏者、バロックやウイーン古典派の音楽を斬新な解釈で演奏し、革命児・異端児などといわれた)が、シューベルトについてインタヴューに答えています。

--『シューベルトの音楽は死の音楽であり、たとえそれが外面上明るい響きがしても、深い悲しみをたたえた音楽なのです。そしてそれは微笑んでいるのです。』-- (1月31日Hamburger Abendblatt紙)

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彼はまたこうも言っています。

--『シューベルトの音楽は私にとってひとつのミステリーです。その泉は謎に満ちています。なぜなら、それはほとんど完全にシューベルトという人格にその源を持ち、その根はつまり、期待はずれなほどウィーン古典派の伝統に刻印されてはいないのです。この音楽は、きわめて直接的に、感情に、霊感に、そしてミューズ(文芸、音楽を司る女神【ギ神】)のキスに由来しているのです。』

 この文だけでもハーノンクールの独自のシューベルトに対するスタンスがうかがわれますね。
われわれが学校の音楽で習う「シューベルトはベートーベンの後の直接のウィーン古典派の継承者」という概念とは全く一致しません。彼はこう続けます。

--『シューベルトの音楽は、ヨハン・シュトラウスのようにウィーンの音楽であり、そのウィーンの方言を話すのです。オーストリア人として私はもちろん、その言葉を良く理解できると思っています。』

 記者がすこしウィットの利いた質問をした。-- アルベルト・アインシュタインはシューベルトの音楽について聞かれて、1928年にこう答えました。《音楽をやれ!愛せよ!黙っていろ!》これについて何か言うことがありますか?

--『私もたぶんすでに多くしゃべりすぎたかもしれません。もし私がこの言葉を知っていたら、このインタヴューは受けなかったんですが・・・。』

 ハーノンクールは今年のウィーン祝祭週間に、現在ほとんど取り上げられることのないシューベルトのオペラ2つ「悪魔の別荘 Das Teufels Lustschloss (1814年作曲、1879年ウィーンにて初演」と「アルフォンゾとエストレッラ Alfonso und Estrella 1822年作曲、1854年ヴァイマールにて初演」を上演する。ウィーン祝祭週間は例年5月中旬より約1カ月開催される。

【訃報】 アウグスト・ヴェンツィンガー氏(チェリスト、ガンビスト)。30年代に歴史的演奏法の研究を先駆けて行った古楽界の草分けで、1934年に創立されたバーゼル・スコラ・カントールムの設立者の一人。昨年12月25日バーゼル。91歳。ようやく最近になって明らかにされた。

コンサート・オペラ案内

今回はベルリン国立歌劇場(Unter den Linden)の祝祭週間のみをくわしくお知らせします。他の都市に関しては次回から徐々にカバーしていく予定です。

ベルリン国立歌劇場(Unter den Linden)1997年祝祭週間 3月23〜31日。
*注:英語圏以外の特殊文字は規約上出ないので適当に変換してあります。

23日


24日

25日


26日



27日


28日

29日


30日


31日

於歌劇場/シューベルト《美しい水車屋の娘》、ペーター・シュライヤー&ダニエル・バレンボイム。
シェーンベルク《月に憑かれたピロ》クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ)、ストラヴィンスキー《小夜鳴鳥》ともにブーレーズ指揮 Thatre du Chatelet,Paris。

於フィルハーモニー/ストラヴィンスキー/交響詩《小夜鳴鳥の歌》、アルバン・ベルク《ピアノ、ヴァイオリンと13の管楽器のための室内協奏曲》、ストラヴィンスキー《ペトルーシュカ》、バレンボイム(Pf)、パールマン(Vn)、ブーレーズ指揮パリ管弦楽団。

歌劇場のプログラムは23日を参照。於フィルハーモニー/シューベルト、ウェーベルン、ストラヴィンスキー、シューベルトの作品。パールマン&バレンボイム。

於フィルハーモニー/シェーンベルク《5つのオーケストラ作品》、ストラヴィンスキー 《ヴァイオリン協奏曲》、シューベルト《交響曲9番》
パールマン、バレンイム指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団。

於フィルハーモニー/シューベルト/ピアノソナタ変イ長調(D557)、変ロ長調(D960)、即興曲(D899)。ラドゥー・ルプ(Pf)

於歌劇場/ワーグナー《パルジファル》

於フィルハーモニー/シェーンベルク/合唱曲《地上の平和》、ストラヴィンスキー《ピアノ と管楽器のための協奏曲》、シューベルト/交響曲《未完成》、ストラヴィンスキー《詩編交響 曲》
アルゲリッチ(Pf),バレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団、国立歌劇場合唱団。

於歌劇場/シューベルト/変奏曲変イ長調(D813)、幻想曲ヘ短調(D940)、グランド・デュ オ ハ長調(D812)、ラドゥー・ルプ&バレンボイム(Pf)。
於歌劇場/ベルク/ピアノソナタ作品1、シェーンベルク/6つのピアノ作品、シューベルト《冬の旅》、ペーター・シュライヤー&ダニエル・バレンボイム。

ワーグナー《パルジファル》



講習会、コンクール情報 

♪バッハ/ヨハネ受難曲、3月21〜26日ブレーメン
講師:マリア・ヴェヌーティ(ソプラノ)、ハンス・ペーター・ブロッホヴィッツ(テノール)。
事務局:Johannes Gutenberg Universitat Mainz,Collegium musicum
Tel.06131-37 12 45 または39 21 70 Fax 06131-37 14 80

♪ チェンバロコンクール(NDR北ドイツ放送音楽賞)。ハンブルク、4月28日から5月11日。
賞金総額3000マルク、その他ハンブルク・テレマン協会賞。
事務局:NDR3,Redaktion Alte Musik,Rothenbaumchaussee132,20149 Hamburg
Tel.040-41 56 27 01

♪ 国際コントラバス講習会。3月10〜16日、ミヒャエルシュタインMichaelstein。
講師:クラウス・トルンプフKlaus Trumpf
事務局:Institut fur Auffurungspraxis Michaelstein,Frau Ingeborg Steuck, Postfach 24,38881 Blankenburg
Tel.03944-90 30 28, Fax 90 30 30

♪ 夏期音楽週間、リート解釈(ピアノ、声楽)及びコントラバス。7月18〜26日、バウツェン Bautzen。
講師:ノーマン・シェトラー(ピアノ、USA/オーストリア)、Satori Hasegawa(コントラバス、日本)
事務局:Freudekreis Lausitzer Musiksommer e.V.,Frau Renate Bleyl, August-Bebel-Straァe 3,02625 Bautzen
Tel.03591-41478


最後にドイツの(くわしい)音楽情報の取得について少しご案内します。

いろいろな意味で、非常に役に立つのがBarenreiter社とGustav Bosse社の共同出版物「MUSIK ALMANACH - Daten und Fakten zum Musikleben in Deutschland」です。容易に想像できると思いますが、この中にはドイツの音楽界(演奏団体、演奏会場、音楽教育とその機関、各種コンクール・賞、メディア、当該官庁、法人団体、各種私的団体など)に関するほぼ全ての詳細な情報が含まれています。目次のところをちょっと見ただけでもドイツ人の几帳面さが伝わってくるような、きわめて良く分類された便利な一冊です。3年ごとに出版されています。93/94年度版の定価は68マルク≒5500円弱。

 同様のアルマナハ(年鑑)で、「コンサート」に特化したものが「KONZERT ALMANACH」です。こちらはHeel社から出ているもので、96/97年度版の存在を確認してあります。450ページ。49,80マルク≒3800円。ドイツの都市別に、演奏者(団体)、曲目、主催者、演奏日時、価格、座席表一覧、などが記載されており、詳細な索引を備えています。

このページに関するご意見ご要望は、E-Mailで catano@ccsj.comにどうぞ。

Cantano

片野耕喜 プロフィール

ボーイソプラノとして歌の勉強を始め、声楽を遠藤優子に師事。東京学芸大学教育学部音楽科卒、東京芸術大学大学院独唱科修了、ハンブルク・コンセルヴァトリウムを芸術家資格を取って修了、現在ブレーメン芸術大学古楽科に在籍し声楽を専攻。日本各地の他、ドイツ、オーストリア、イギリスでテノールソリストとして演奏する。北ドイツ放送(NDR)合唱団準団員。
バッハ・コレギウム・ジャパン所属。同団体のプロジェクトとしてBISレーベルより、バッハ「ヨハネ受難曲」「カンタータ集」を録音。